夫婦漫才
他人同士が夫婦になって50年以上も一緒に暮らしていると
呼吸を合わせるように共に行動するようになる。
「そんなことはない」と否定されそうだが
身近な私が見ると
父と母の両者は、あうんの呼吸が合っている。
特に会話では
二人の間に絶妙なやりとりが日夜繰り広げられている。
テレビに映ったきれいな花嫁さんを見ながら
母が父に言った。
「おとうさんも、きれいな奥さんがよかったでしょう」
「いいかどうか、結婚してみなきゃわからん」
「でもさ、きれいな奥さんだと張合いが出るんじゃない」
「張合いが出るかどうか、知らん」
「そうじゃなくて、素直にきれいな奥さんだとうれしいでしょ」
「俺はきれいな奥さんと結婚したことないから、わからねえ」
そりゃ、そうである。
(*また適切な会話とはいえませんが、以下、老人二人のジョークだと暖かい目でみてください)
隣国の最高責任者が亡くなったニュースを見た母が
帰ってきた父に真剣に言った。
「おとうさん、大変大変。またお葬式ができちゃった」
「そうか、どなたが亡くなったんだ」
「○○総書記」
「そうか。葬儀は何時だ」
「いつだろう。確かめなきゃね」
「それはそうと、すぐに行かなきゃならんのか」
「うん。でも、パスポートないよ」
「大丈夫だ。チャーター機を用意してもらう」
「そうだね。香典はいくら用意すればいい?」
「う~ん。どうしたもんかなぁ」
父と母は、その国とは全くの無関係である。
にもかかわらず、その後も話し合いは重ねられた。
父はまじめな人だ。
実直で曲がったことがきらいな、頑固な性格だ。
黒と言ったら黒と言い張る、少々融通のきかないところもある。
母は明るい人だ。
少し抜けたところがある、子供っぽい性格だ。
周りにいる家族は、母の言動に振り回されている。
この二人が50年以上一緒に暮らすうちに
お互いに感化し、徐々に変わってきたのだろう。
若い頃には想像もできなかった会話が、今は成り立っている。
母のぼけに父が突っ込んだり
母のぼけに父が乗ったり
自宅で夫婦漫才を繰り返している。
「ねえ、おとうさん。この頃、まるくなったよね」
「何が、丸くなったんだ」
「だから、おとうさんが丸くなったって」
「俺は丸くない。背中も丸まっていないし、太ってもない」
「そうじゃなくて、まるくなったって性格のこと」
「お前の話は、唐突でわからない。順序立てて言え」
「はいはい。ごめんなさい。
だって、私が何かしてもあまり怒らないじゃない。
だから、おとうさんも優しくなったなぁ、まるくなったなぁって思ったのよ」
「まるくなったんじゃなくて、言っても無駄だから諦めたんだ」
「あら、そうなの。あはは」
今日も漫才は続く。
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