基調音「おと な り」
聴いていると穏やかな気持ちになれる音
心地よくて、当たり前のように自然と受け入れられる音
それを『基調音』というらしい。
音楽に好きなジャンルがあるように
『音』の好みも人によって違う。
自分には癒される音でも、人には雑音にしか聞こえないことだってある。
風で草木が揺れる音
強い風で大木の枝がきしむ音
夏の終わりに川原に響くひぐらしの鳴き声
ビオラの重厚な響き
分厚い小説をパタンと閉める音
熟睡中の「にゃにゃにゃにゃ」猫の小さな寝言
寝静まった深夜、遠くから聞こえる列車の音 etc
私の好きな音は、まだまだいっぱいだ。
少し前に観た「おと な り」という映画は
この基調音がたくさん詰まっていた。
音が筒抜けの木造アパートの隣同士に住む男女
ふたりとも結構長く住んではいるものの、一度も顔を合わせたことはない
キーホルダーのカギがぶつかるわずかな金属音
コーヒー豆を挽く音
可愛らしいくしゃみ
ベランダで洗濯物をパンパンと叩く音
いつも聞こえる同じ曲の鼻歌
レコーダーに合わせて復唱されるフランス語
壁を挟んで感じられる涙
それに重なる励ましの歌声
隣から聞こえる音で互いの存在を確認し
互いが発する音がなぜか心地よく…そして惹かれあう
物語では、同じ場面でふたりが一緒に登場するシーンはない。
(実はお互いの存在を知らずに登場するシーンはある)
エンディングで初めて顔を合わす。
しかし私には、最初からふたりが、同じ風景で同じ感覚を共有していたように思えた。
知らないうちに、陳腐な言い方だが、赤い糸を手繰り寄せるかのように
次第にふたりの距離は縮まっていく。
人を好きになるとき、容姿やスタイルも大きな要素だが
「音」も重要なのではないだろうか。
その人の発する音が、好みの音でなかったら
一緒に過ごすのが苦痛になることだってあるだろう。
お互いの基調音が同じだったら、一緒にいて心地よいだろう。
さて、物語のふたりのその後はというと
エンドロールが流れる中の会話だけで想像できる。
基調音が同じふたりですから
私の妄想に間違いはない。
※後日、私の頭の中では、その後のふたりの歩みをかなり先まで作ってあるのであしからず。
たまには映像にとらわれず
音や感覚だけで、季節を感じてみてはいかがでしょうか。
何この匂い?
なんかおいしそう。
うわっ、とたんにお腹すいてきた。
ラーメン食べたい。
私の場合、どうも邪念が入りすぎるようだ。
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